【書評】ファインマンさん 最後の授業

デカルトが虹を数学的に分析しようと思ったのは、虹にどんな特徴があるからだと思う?

ファインマンさん 最後の授業)

 

年の近い同僚とお互いの読書について盛り上がった。

共通する本の名前が出ると、お!アナタいい人!と短絡的に感じるのだが、人によって本にたどり着いた経緯も捉え方も違っていて聞いていて飽きない。

同僚はおざなりな読書を嫌うがあまり、読んだページを破って捨てていたことがあるという。読書は大事にするが本は大事にしない奴。

 

そんな同僚が学生時代からことあるごとに読み返しているという本を読んでみた。

(この本は破かれなかったらしい)

 

ファインマンさん 最後の授業 (ちくま学芸文庫)

 

物理学の世界では天才として名高いリチャード P. ファインマン教授。私自身は同教授の自伝エッセイ「ご冗談でしょう、ファインマンさん」を読むまで知らなかったのだが。

この「ー最後の授業」は同じく物理学者だった著者レナード・ムロディナウがファインマン教授の晩年を回想したもの。

自分の進路に悩める著者がファインマン教授や他の物理学者たちとのやり取りの中で何を大切にするべきか、を見つけていくというお話。

学者同士の会話が中心のため物理学についての話は多いが、物理学の説明に主眼が置かれているわけではないので知識がなくてもすらすら読める。

 

進路に悩む著者にファインマン教授が投げかけるのが冒頭の引用だ。なぜデカルトは虹を研究したのか?物理学的な意義を並べ立てる著者に教授はこう返す。

 

デカルトがその気になったのは、虹を美しいと思ったからだよ

 

さらに教授は問いかける。子どものころ科学が好きだったか?おもしろかったんだろ?と。

 

私自身のこれまでを振り返ると、大学への進学時、バックパッカーとして旅に出た時、最初の会社をやめて渡米した時、いずれも胸が踊るような期待と面白さを判断基準に行動していたと思う。改めてこんな生き方でいいよな、と再認識したのでした。

 

ともすると鼻白んだり説教くさくなるようなメッセージですが、ファインマン教授という個性的な人物のひととなりとその日常を通じて描かれていて、押し付けがましく感じることもなく、雨上がりの空のように澄んだ読後感。

 

月と六ペンスが好きなひとには間違いなくおすすめです。 

 

ファインマンさん 最後の授業 (ちくま学芸文庫)

ファインマンさん 最後の授業 (ちくま学芸文庫)