電動スクーター:供給先確保の問題
電動スクーターを日本のニュースでも見かけるようになったようなので、
本投稿では下記のようなシンプルな疑問に頭を巡らせてみたい;
電動スクーターシェアに求めるものは何か?
さて、サンノゼでは道端で電動スクーターを見かけても驚かなくなって久しい。週明けにはBirdやLimeのスクーターが定位置に配備されているし、ところどころに乗り捨てられたスクーターがあることも日常の風景だ。
日本の都市部に住んでいると必要性がピンとこない。交通網が発達しているし、道は狭く人が多い中で乗りこなす絵が浮かびづらい。
ただし私の住んでいるサンノゼ周辺ではバスや電車が一部あるとはいえ、使い勝手は悪い。自動車があればつい自動車を使い、歩くこともほとんどない。少し先の店まで、といっても数百メートルである。本来なら歩けばいいのに車に慣れてしまって歩かない。
そんなときに電動スクーターが目の前にあると、つい乗ってしまう、乗りたくなるという気持ちは日本にいたときよりもわかるようになった。普段歩いていないので歩くことが億劫でしょうがない。でも車を出すのも面倒、という具合だ。
ここに冒頭の疑問への答えがあると個人的には思っている。
乗りたい、と思ったときに目の前にあること
それこそが複数社ある電動スクーターシェア提供会社の中からユーザーが好みの会社を選ぶ基準だろう。
解決策は一つ。とにかく多くの電動スクーターを配備することである。
ここがUberやLyftのような自動車を使ったライドシェアのビジネスと大きく異なる店でもある。自動車によるライドシェアは基本的にはドライバーが所有する自動車を配車することによって成り立っている。すなわち運営サイドは自動車を用意することなく、ユーザーの「乗りたい」と思ったときに「目の前に」自動車を持っていくことができる。
一方で電動スクーターシェアの場合は、運営サイドが自社の資産として電動スクーターを調達しなければならない。
雨後の筍のごとく立ち上がった電動スクーターの企業たちは、生まれたての産業の中で供給先の確保に四苦八苦しているようだ。
電動スクーターは一台あたりに高頻度で利用されることでコストを回収するビジネスモデルであるがゆえに、利用頻度が多い場合には故障が増え寿命が縮む。バッテリーの交換などのメンテナンスにもコストが生じる。
電動スクーターシェアの大手であえるBirdやLimeをはじめ、多くの企業は中国企業にその供給を見込んでいる。下図をみていただけるとわかりやすいが、特にNinebotが主な供給先となっている。同社は2015年にセグウェイ社を買収して話題になった(news)。
(Source Link)
ラベルやカラーが違うだけで、どうみても同じ電動スクーターが並んでいることもあり、電動スクーターを用いた新たな産業によってもっとも景気がいいのはこのNinebotやその他の供給企業ではなかろうかとも思うほどである。
もちろん各社は乗り心地やランニングコストを低く抑えられるような頑丈な作りの電動スクーター開発に力を入れ、ハードの面からもオリジナリティを出そうとしている。
しかし、ユーザーの観点からすると現時点でハードの違いは些細なものだ。そんなことより欲しいときに目の前にあるかどうかの方がよっぽど重要だと私は思う。とにかく多くのスクーターを網羅的に配置することができた企業が勝つ構造だと思うのである。
スマートフォンの画面上で、ユーザーにアプリをタップしてもらうことができれば、そしてその位置を維持できればビジネスとしては安泰とも言えるだろう。
現に自動車のライドシェアサービスについていえば、UberとLyftは特にサービス内容に差はない。ただ使い始めたのがUberだったという理由で私はUberのアプリを使い続けている。あえて他のアプリをダウンロードして、煩雑なユーザー登録をしたいと思わない。
電動スクーターも自分の生活範囲で頻度よく遭遇できるシェアスクーターがあれば、そのアプリをダウンロードして終わりだ。
その意味でもUberがBirdを買収し、移動にかかるサービスを同社のプラットフォーム上で完結させようとしていることは理にかなっているし、ユーザーとしては歓迎したいところだ。
電動スクーターの供給先の能力が限られている中で各社がしのぎを削っているが、いっそ全社共通のハードウェアプラットフォームにして、どの企業のアプリからでも起動できる仕様にしたらどうだろうか。
サービス提供者同士でコンソーシアムを作ってハードはシェアしながら、他の交通機関との連携などのサービスで差別化を図ってもらえるとユーザーとしては嬉しい限りである。
あるいはもう一レイヤー上で多種のスクーターシェアサービスアプリをまとめて決済まで完結させるサービスプラットフォーム提供があってもいい。
とにかくユーザーとしては乗りたいときに乗れるという環境ができればいいのだから。
以上、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
参考: